「海外における平安文学及び多言語翻訳に関する研究」(2017年度 基盤研究(A)課題番号︰17H00912 研究代表者 伊藤鉄也)

論文名

佐賀大学小城鍋島文庫『十帖源氏』の挿絵と覆刻

執筆者

沼尻利通

掲載誌名

『小城藩と和歌〜直能公と『岡花二十首和歌』の里帰り〜』(佐賀大学地域学歴史文化研究センター)

発表・刊行年

2013

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無し

要旨

備考

要約(淺川槙子):『十帖源氏』は吉田幸一氏の諸版の研究により、著者である立圃の跋文・刊記の有無から四種類に分類される。
それによると、(D)無跋無刊記本→(C)立圃自跋無刊記本→(A)万治四年荒木利兵衛版→(B)万治四年立圃自跋本(書肆は鶴屋喜右衛門)の順に成立しており、同一の版木を使用したものと推測されている。
この論文では四種類の版本が同一の版木から重刷されたのではなく、覆刻された可能性があるのではないかという疑問をもとに、佐賀大学小城鍋島文庫が所蔵している『十帖源氏』2冊(甲本と乙本)の挿絵に着目して考察した。なお甲本は(D)の版であり、乙本は(B)の版である。
結果、
①甲本に立圃自筆署名と花押があるので、(D)は初版。花押は転写不可能であるから。
②挿絵の特徴から、甲本は(C)の版と同じであり、乙本は(A)の版と同じである。
③甲本は丁寧に彫られているが、乙本は甲本に比べていささか粗雑である。被せ彫りのミスが発生したとの想定される。
(C)・(D)は初版、(A)・(B)は覆刻と推測できる。