「海外における平安文学及び多言語翻訳に関する研究」(2017年度 基盤研究(A)課題番号︰17H00912 研究代表者 伊藤鉄也)

 

朝顔 海外平安文学研究ジャーナルvol.1.0

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伊藤鉄也 編/2014年11月30日発刊(非売品)

●目次

創刊の辞 伊藤 鉄也 p3

平成25 年10 月に採択された科研「海外における源氏物語を中心とした平安文学及び各国語翻訳に関する総合的調査研究」(基盤研究A︰25244012)では、ホームページ「海外源氏情報」を公開して、調査研究と情報発信等の運営を推進しています。

研究論文 スペイン語版『源氏物語』の評価と享受 高木 香世子 p9

日本文学のスペイン語圏への紹介は、20 世紀に入ってから主としてフランス語あるいは英語からの重訳で始まり、ラフカディオ・ハーン(Patrick Lafcadio Hearn)の『怪談』や 新渡戸稲造の『武士道』、岡倉天心の Book of Tea などが出版され、幸いな事にこれらは現在にいたるまで再版され続けている。しかしながら、スペイン語圏で日本文学について話す場合の大きな悩みは、重訳という問題以上に、翻訳された作品の絶対数がなんと言っても少なく、テーマがこれらの作品に限られてしまうことであった。21 世紀に入るまでは、川端康成や大江健三郎のノーベル賞受賞、あるいは三島由紀夫のセンセーショナルな切腹事件によって起こった日本文学紹介の波に乗って、スペインにおいても紹介が行われて来たというのが否めない事実である。
しかし、こうした歴史的状況はここへ来て急速に改善されつつあると感じられる。

研究論文 『源氏物語』の「京都」はどう英訳されたか― 創造された京都と、変貌する『源氏物語』 ― 須藤 圭 p37

いま、ここにある、源氏物語とは何か。わたしたちが手にとり、わたしたちが読む源氏物語とは、いったい、どのような存在であるのか。それは、膨張し、変貌した源氏物語だ。本稿では、源氏物語の、こうした様態を捉えてみたい。
源氏物語は、あまたの日本文学のなかでも、異質なほどに凛とした、きらびやかな輝きを放ちつづけている。日本というひとつの地域にとどまらず、世界にまで広く波及し、その外国語訳も多くが刊行されている。そこで、本稿では、これらの外国語訳のうち、試みに、1925 年から1933 年にかけて刊行されたアーサー・ウェイリー英訳のThe Tale of Genji を具体例としてとりあげる。そのことばを見つめながら、源氏物語の世界へ分け入ってみることにしよう。

小論文 ベーネル訳『源氏物語』における和歌の翻訳 ―英訳・仏訳との比較から― 常田 槙子 p58

海外での『源氏物語』受容を考える際、アーサー・ウェイリーの仕事は極めて重要であろう。特にイギリスのみならず、ヨーロッパ各国で重訳が出され、『源氏物語』を日本古典の名作として知らしめる役割を果たしたという点において、ウェイリー訳は非常に強い影響力をもった翻訳であった。しかしその一方で大胆な自由訳と評されるがごとく、ウェイリーの独創的な解釈も多く含まれており、しばらくするとウェイリーの仕事を批判的に見直そうとする『源氏物語』の新たな完訳が刊行されるようになる。

翻訳レポート Traduttore traditore -イタリアが恋に落ちた『源氏物語』- イザベラ ディオニシオ p69

翻訳論において、必ずといっていいほど引用されているイタリアの諺に、「Traduttore, traditore」があります。二つの言葉を往ったり来たりする<翻訳者(traduttore)>は、結局どちらの側にも信義を貫けない<裏切り者(traditore)>であるというのがその慣用句の意味ですが、同じ語源から派生していると言われるtradurre( 訳出する)とtradire(裏切る)という二つの動詞が掛けられており、その語呂合わせは翻訳者泣かせの表現を作り上げています。日本語では通常<翻訳者は反逆者>と訳されているようですが、権力などに逆らって派手な活動を起こしている反逆者にひきかえ、翻訳者による数多くの犯罪行為は闇に葬られることがしばしばあり、原作者が知らないところで行われる密かな殺しがほとんどです。日本が世界に誇る文学傑作『源氏物語』をヨーロッパ言語に訳そうと手にかけた者は、まさに暗闇の殺し屋に似たような覚悟で臨んだことでしょう。

執筆者一覧 p77

執筆者一覧

科研活動報告 p78

科研活動報告

編集後記 p82

編集後記

研究組織 p83

研究組織

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