「海外における平安文学及び多言語翻訳に関する研究」(2017年度 基盤研究(A)課題番号︰17H00912 研究代表者 伊藤鉄也)

第10回研究会報告(2019/12/18)

伊藤科研 第10回「海外における平安文学」研究会報告

 

■日時:2018年1月20日(土)14:30~18:00(開場:14:00)

■場所:水道橋駅前ホール

 

■プログラム

・挨拶(伊藤鉄也)14:30~14:35

・自己紹介 14:35~14:50

・報告「2017年4月~12月までの研究報告」(淺川槙子) 14:50~15:00

・報告「2018年度の研究計画」(池野陽香) 15:00~15:10

・研究発表「インドにおける『源氏物語』の読みのパラダイム:ウルドゥー語の翻訳を通して①」

(モハンマド・モインウッディン) 15:10~15:40

・研究発表「中国における世界文学としての『源氏物語』-中国語訳の序を通じて-」(庄婕淳) 15:40~16:10

・休憩(10分) 16:10~16:20

・研究紹介「「翻訳論」の意味を考える」(谷口裕久) 16:20~16:30

・研究紹介「『今昔物語』に現れたインドのイメージ」(佐久間留理子) 16:30~16:40

・研究発表「翻訳書籍の展示報告」(池野陽香) 16:40~16:55

・研究発表「『源氏物語』ベトナム語訳し戻し」(松口果歩・松口莉歩) 16:55~17:15

・研究発表「橋本本における『は』と『ば』」(門宗一郎・田中良) 17:15~17:25

・ディスカッション 17:25~17:50

・連絡事項 17:50~17:55

 

■議事録

・挨拶(伊藤鉄也)

初参加者に向けての科研の紹介と今後の展開について、研究代表者より説明があった。また、参加者の簡単な自己紹介がおこなわれた。

 

・報告「2017年4月~12月までの研究報告」(淺川槙子)

2017年4月~12月の間で、本科研が取り組んだ調査研究について報告をおこなわれた。

 

・報告「2018年度の研究計画」(池野陽香)

本科研2年目となる来年度の研究計画についての内容紹介と、提案に関して参加者から意見をうかがった。

 

・研究発表「インドにおける『源氏物語』の読みのパラダイム:ウルドゥー語の翻訳を通して①」

(モハンマド・モインウッディン)

ウェイリー訳、フサイン訳、本科研の研究協力者である村上明香訳の違いから、インドの読者に伝わる訳はどうすべきかを、具体例を元にした発表であった。「日本の文化や慣習がどう伝わっているか」という大きな問題について、今後も考えていく必要があると痛感する内容であった。

 

・研究発表「中国における世界文学としての『源氏物語』-中国語訳の序を通じて-」(庄婕淳)

10種類の中国語訳『源氏物語』の序文を比較検討し、中国の読者に伝えたい意図について考察するものであった。中国語訳の研究は、細かな訳の違いを論ずるものが多い中で、中国語訳を熟知した庄氏ならではの、序文から見た違いに言及する、興味深いものであった。

 

・研究発表「翻訳書籍の展示報告」(池野陽香)

研究代表者が所蔵する翻訳書籍を大阪観光大学図書館で展示を行った事についての報告と、展示解題として用いた解説文の内容に関する発表であった。現在、解説文をもとにさらに調査研究した内容を1冊の書籍にまとめる準備が進んでいる。今回の発表はその総括として行われた。なお、この解説文を集めたデータは、『平安文学翻訳本集成2018』というタイトルの報告書の一部として、2019年3月に発行された。

 

・研究発表「『源氏物語』ベトナム語訳し戻し」(松口果歩・松口莉歩)

1991年にトヨタ財団の助成により翻訳された、ベトナム語訳の『源氏物語』について、日本語への訳し戻しを行った事についての研究発表であった。発表者にとって未習言語であるベトナム語を日本語に訳し戻すという作業は、初めて取り組むことでもあり、着手して間もない現在の状況をありのままに報告し、今後の進むべき方向を問う、というものであった。研究方法について、参加者からは有益なアドバイスをいただいた。また、ベトナム語の単語の並び方については、早速検討すべきこととなった。

 

・研究発表「橋本本における『は』と『ば』」(門宗一郎・田中良)

橋本本『源氏物語』(国文学研究資料館蔵)を、変体仮名をそのまま翻字する形式(変体仮名翻字版)で翻字を行った際に、本文中に登場した「は」と「ば」の字母に関する発表であった。提示した疑問に対して、それぞれの分野の専門家から的確な答えをいただけたのが収穫であった。平安時代には、濁音を表記する仮名文字はなかったとされているそうであり、大量の資料をもとにしてのものではないようであるとの意見があった。今後ともこのテーマは意外な事実が浮き彫りになるかもしれないという、期待を抱かせる発表となった。

 

・ディスカッション

各発表および本科研の研究に関して、参加者全員でディスカッションを行った。

 

以上