論文名
小説として読まれた英訳源氏物語
執筆者
緑川眞知子
掲載誌名
海外平安文学研究ジャーナルvol.2.0
発表・刊行年
2015
要旨
アーサー・ウェイリー(Arthur Waley)訳の源氏物語初版表紙のほぼ中央に「この物語は11 世紀の日本の宮中に仕えた女性(宮中女房)の作品です。現存する優れた長編小説のひとつだということが、一読直ぐさまわかると思います」という惹き句がある。原文は、This tale is the work of a Japanese Court lady of the eleventh century. It is believedthat it will at once be recognised as one of the greatest long novels inexistence である1。「物語」と訳した語は、英語ではtale であるが、その直ぐ後には「長編小説のひとつ」とnovel の単語も使われている。ウェイリー訳源氏物語が出たころは、いわゆる小説と邦訳されるnovel の概念が、おおよそのところ現代において認識されるnovel の概念としてかたまりつつあった時代である。「物語」の訳語については後述する。「小説」として認識される作品において、必ず意識されたのは「作者」である。紫式部の石山寺執筆伝説は有名であるが、明治時代という早い時期にはじめて源氏物語を英語にした末松謙澄は、見返しに紫式部石山寺執筆の図を挟んでいることからもわかるように、この時代作者は大きな存在であった。(※冒頭部分)
備考
https://genjiito.org/cms/journals/juornal2/ にてダウンロード可能