「海外における平安文学及び多言語翻訳に関する研究」(2017年度 基盤研究(A)課題番号︰17H00912 研究代表者 伊藤鉄也)

論文名

(レポート)Traduttore traditore:イタリアが恋に落ちた『源氏物語』

執筆者

イザベラ ディオニシオ

掲載誌名

海外平安文学研究ジャーナルvol.1.0

発表・刊行年

2014

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要旨

翻訳論において、必ずといっていいほど引用されているイタリアの諺に、「Traduttore, traditore」があります。二つの言葉を往ったり来たりする<翻訳者(traduttore)>は、結局どちらの側にも信義を貫けない<裏切り者(traditore)>であるというのがその慣用句の意味ですが、同じ語源から派生していると言われるtradurre( 訳出する)とtradire(裏切る)という二つの動詞が掛けられており、その語呂合わせは翻訳者泣かせの表現を作り上げています。日本語では通常<翻訳者は反逆者>と訳されているようですが、権力などに逆らって派手な活動を起こしている反逆者にひきかえ、翻訳者による数多くの犯罪行為は闇に葬られることがしばしばあり、原作者が知らないところで行われる密かな殺しがほとんどです。日本が世界に誇る文学傑作『源氏物語』をヨーロッパ言語に訳そうと手にかけた者は、まさに暗闇の殺し屋に似たような覚悟で臨んだことでしょう。(※冒頭部分)

備考

https://genjiito.org/cms/journals/juornal1/ にてダウンロード可能