海外平安文学研究ジャーナル 中国編2019
伊藤鉄也 編/2020年12月25日発刊(非売品)
●目次
はじめに 伊藤鉄也 p3
2019年12月20日(金)~22日(日)の3日間にわたり、中華人民共和国広東省にある広東外語外貿大学において、「中日比較文学国際シンポジウムおよび2019年度広東外語外貿大学大学院生フォーラム」を開催しました。これは、広東外語外貿大学と大阪大学が主催者となって取り組んだ国際研究集会です。
基調講演「世界中で読み継がれる〈平安文学〉」 伊藤鉄也 p13
今回、この広州の地で開催されるシンポジウムとフォーラムは、「新時代における中日比較文学、比較文化研究の新視野」をテーマに掲げるものです。そこで私は、現在取り組んでいるテーマの「海外における平安文学及び多言語翻訳に関する研究」(科研課題番号︰17H00912)を紹介しながら、世界各国でさまざまな翻訳によって読み継がれている〈平安文学〉について概観します。このテーマは、「海外における源氏物語を中心とした平安文学及び各国語翻訳に関する総合的調査研究」(25244012)を引き継いで展開するものです。
研究発表「『源氏物語』以後の文学をどのように翻訳するか―中古に受容された『源氏物語』―」 須藤圭 p21
延暦13年〈794〉から文治元年〈1185〉までのおおよそ400年の間、平安時代と区分される時代のことを「中古」と呼び慣わす。「中古」の時代は、平安京に生きた貴族たちが政治、文化を主導した時代であり、その恵まれた文化環境のなかで、たくさんの文学が生まれることになった。こうした「中古」の時代、寛弘5年〈1008〉頃に成立した『源氏物語』は、現代に至るまで、あまたの文物に大きな影響を与えつづけている。そしてまた、当然のことながら、この物語は、成立して間もない「中古」の時代においても、非常に多くの読者を獲得し、同時期の文学の生成にも、少なくはない影響を及ぼしていたということができる。
研究発表「中世に受容された『源氏物語』」 小川陽子 p43
〈中世〉という時代区分をどこに設けるかは、日本・中国・西洋など、対象によってそれぞれに異なる。さらに日本史においても、どの時点を中世の始まりと捉えるかは、見解が分かれている。では、文学史、とりわけ『源氏物語』受容史の場合はいかがであろうか。
研究発表「林文月訳『源氏物語』」 庄婕淳 p63
林文月訳『源氏物語』は中国語圏において一番早く出版された全訳であるとともに、豊子愷の訳と並べて、もっともよく知られている訳本と言えるだろう。林文月は1973年4月から1978年12月にかけて台湾大学外国語学部の雑誌『中外文学』に66回に亘り、『源氏物語』の中国語訳を連載し、それを五冊にまとめて1978年に出版した。訳文のスタイルは「典雅荘重」と言われるが、訳本そのものについての研究はけっして進んでいるとは言えない。先行研究のなかで、「誤訳」或いは「不足」を主とする議論が多い一方、豊子愷の訳と比較し、翻訳表現とその伝達の中身を分析して議論し、翻訳者が使用した参考文献の基本的探索に戻ろうとして、林訳が研究的な翻訳であり、豊訳は鑑賞的な翻訳であると結論している論もある。
研究発表「『源氏物語』における読書活動についての考察」 呂 天雯 p79
平安時代においては、漢詩漢文からなる漢文学と和歌や物語などからなる和文学とがともに輝きを放ち、そのうち紫式部、清少納言などの才女が作った物語や日記を代表とする平安文学史上に特筆すべき女流文学も隆盛を極めている。貴族文人や女流作家の文才を支えたのは、繊細な感情と豊富な学識教養だと考えられる。当時の人の読んでいた書籍は様々な文学作品に紹介されている。
付録 広州での調査研究報告 伊藤鉄也 p97
早朝より、学術フォーラムの会場である広東外語外貿大学へ行きました。
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