「海外における平安文学及び多言語翻訳に関する研究」(2017年度 基盤研究(A)課題番号︰17H00912 研究代表者 伊藤鉄也)

第3回「海外における平安文学」研究会報告(2014/06/06)

20140226第3回研究会

2014年度 伊藤科研 第3回研究会
日時:2014年6月6日(金)
場所:国文学研究資料館・第1会議室(2階)

6月6日(金)国文学研究資料館・第1会議室において、第3回研究会を開催しました。

伊藤代表の挨拶の後、担当者からの報告、のち資料をもとにディスカッションを行いました。
以下に抄録を掲載します。

1.2014年度4〜5月の報告
今年度に入ってからの2ヶ月間の活動報告がなされた。項目ごとの進捗は次の通りである。

(1)翻訳から見た日本文化の変容
昨年度に引き続き訳し戻しをおこなっている。

(2)グロッサリーの研究と編纂
資料の収集を進めている。

(3)翻訳研究論文データベース(各国語)
「源氏物語」「平安文学」の2種類にわけて、データベースを作成した。今後、逐次科研サイトにて公開していく予定である。

(4)海外における日本文学研究における論文データベース
先行研究の成果『海外における日本文学研究論文1+2』より平安文学に関する部分を抜粋。データベース化を行っている。

(5)『源氏物語』と平安文学に関するサイトの調査
調査を終了し、成果を科研サイトに公開している。

2.科研サイトの稼働状況について

4〜6月のアクセス数と翻訳辞典ダウンロード数を報告した。
また、現在公開しているデータベースや情報についての説明を行った。その際に、「翻訳者データベース」の作成について意見が出された。海外の翻訳者については、利用可能な海外データバンクが利用できるとのこと。今後、公開コンテンツとして検討する。

3.スペイン語訳『源氏物語』「桐壺」の解説とディスカッション

訳し戻しを終えたスペイン語訳「桐壺」(6種類)について内容ごとに小見出しを整理、72項目に分けて対比表を作成した。
さらに、(1)人物(2)儀礼(3)場所(4)調度・乗り物・色など(5)動物(6)植物(7)気象・時間・空間の7つに分け、関連する語をいくつか例にあげた(東宮、野分など)。このデータをもとに行われたディスカッションでは、以下のような意見が交わされた。

・語によっては文脈でみる必要があるのではないか。
・底本がわからない翻訳も、内容から類推が可能なケースもあるのでは。
・日本固有のものを現地のものに置き換えた場合、まったくイメージが異なるものになる場合がある。
・訳し戻し担当者の知識如何によって影響を受けている部分もある。
・人物(官職・位階・立場)に関する語は、あまり原文から離れる翻訳はない。
・「坊」などの建物を意味する語を、人を指し示す意味として翻訳していない。
・「袿」をチュニックとするなど、衣服に関する訳はおもしろい。
・平安時代の時刻である「申」などを時間で翻訳さずに、そのまま「申」としているのは、日本らしさを演出するための最近の傾向かもしれない。
・「虫の音」について、「羽ばたき」「やかましい音」「コロロギ」「甲高い声」等々多彩な翻訳がされている。
・注釈の対比も必要なのではないか。

4.今後の活動について

2014年度の計画については、以下の報告がされた。

(1)今後の研究会・国際集会の開催予定

①2014年8月18日(月)〜8月29日(金)のいずれかの日を予定。
・開催場所 国文学研究資料館
・今西先生の科研と合同で開催することを検討している。

②2014年9月26日(金)を予定。
・開催場所 ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)
・出発日 9月24日(水)/帰国日 9月28日(金)を予定

(2)科研の報告書について

・タイトル『海外における平安文学研究ジャーナル』
・Webでの公開。冊子形式はとらない。ただし、執筆者・科研のメンバーには、冊子形式での頒布も検討する。
・第1回目の締め切りは、2014年8月31日(日)。
・投稿された原稿を執筆者の業績とするために、「ISBN」の取得を検討する。

(3)中古文学会(平成26年度 春季大会)でのフリースペース出展について

今西先生の科研と本科研が、フリースペースに出展し、科研の報告書の展示等を行った(6月7〜8日、於:立教大学新座キャンパス)。また、好評のうちに『日本古典文学翻訳事典1〈英語改訂編〉』(希望者)を配布した。

なお、第4回研究会は上記参照。