伊藤科研 第11回「海外における平安文学」研究会報告
■日時:2018年6月20日(土)17日(日)14:00~18:00
■場所:大阪観光大学 明浄1号館4階141セミナー室
■プログラム
・挨拶(伊藤鉄也)14:00~14:05
・自己紹介 14:05~14:20
・報告「2017年度の活動報告と2018年度の活動予定」(大山佳美)14:20~14:30
・報告「インド・ミャンマーの調査研究に同行して」(松口果歩・松口莉歩)14:30~14:50
・研究発表「『更級日記』をハンガリー語に翻訳して」(フィットレル・アーロン)14:50~15:25
・休憩(20分)
・研究発表「文化伝達の視点から見る『源氏物語』の中国語訳-豊子恺、林文月、葉渭渠の訳を例として-」
(庄婕淳)15:45~16:20
・研究発表「ビルマ語訳『源氏物語』を日本語に訳し戻して」(エー・タンダー・ナイン)16:20~16:40
・休憩(20分)
・共同討議「翻訳者とともにビルマ語訳『源氏物語』を考える」17:00~17:45
司会進行 伊藤鉄也
ディスカッサント ケィン・キン・インジィン、森銑一
・連絡事項
■議事録
・挨拶(伊藤鉄也)
初参加者に向けての科研の紹介と今後の展開について、研究代表者より説明があった。また、参加者の簡単な自己紹介がおこなわれた。
・報告「2017年度の活動報告と2018年度の活動予定」(大山佳美)
本科研の2017年度における活動および2018年度の活動予定についての報告がおこなわれた。
・報告「インド・ミャンマーの調査研究に同行して」(松口果歩・松口莉歩)
行程表をもとにして、学生の視点からのわかりやすい報告がなされた。実に多くのスケジュールをこなした旅であり、充実していたことが、十分に伝わってくる報告であった。
・研究発表「『更級日記』をハンガリー語に翻訳して」(フィットレル・アーロン)
発表者は2018年3月に刊行されたハンガリー語訳『更級日記』の翻訳者である。そのことから翻訳をして行く中でわかったさまざまな問題点をまとめた発表であり、ハンガリー語がフィンランド語や日本語に近い言語であることや、出版にあたって写真や図版の権利関係の処理に関する話など、翻訳者ならではの視点にあふれた内容であった。
・研究発表「文化伝達の視点から見る『源氏物語』の中国語訳-豊子恺、林文月、葉渭渠の訳を例として-」(庄婕淳)
絵や注に関して興味深い問題提起があり、異文化コミュニケーションの問題意識が明確に伝わってくる内容であった。質疑はローマ字表記に集中し、大事な問題であることを再確認した結果となった。
・研究発表「ビルマ語訳『源氏物語』を日本語に訳し戻して」(エー・タンダー・ナイン)
発表者は、『源氏物語』に対する知識が少ない状態で日本語へ訳し戻しをおこなったとのことであった。翻訳をおこなった感想は文化を言葉で伝えることの難しさがわかったということであった。発表者が作成した訳し戻しデータは、「桐壺」のみのデータであるとはいえ、共同研究する上で、十分に活用できる基礎資料となっている。次はその分析に着手してもらうことで、さらなる成果につながることが期待できる内容であった。
・共同討議「翻訳者とともにビルマ語訳『源氏物語』を考える」
日本語への訳し戻しを行ったナイン氏が投げかけたビルマ語訳『源氏物語』のいくつかの疑問から、ディスカッションは始まった。詩人である翻訳者ケィン氏のビルマ語訳が、非常にレベルの高い文学的な翻訳であることが、意見交換の中から浮かび上がり、大きな収穫となった。
参加者から出た翻訳者ケィン氏への質問を以下にまとめておく。
・推薦の序文を書かれたナンダーモーチェさんはどのような方か?
・訳者の序文に、パキスタンでも翻訳されているとあるが、どういった事情があるのか?
・典拠としたとする田辺聖子訳『新源氏物語』には、「桐壺」と「帚木」がない。ビルマ語訳の「桐壺」は何を参考として訳したのか?
・「帚木」の雨夜の品定めがないことはなぜか?
・「空蝉」にある「不倫」という言葉は日本と同じ意味か?
以上